「すみません、席どうぞ!」
「すみません、席どうぞ!」
二回目だ。
電車の中、
声の主は下の方から聞こえる。
見れば、
制服のおそらく私立の小学校であろう
低学年の男の子だ。
彼はつり革で立っている反対側の女性に後ろから
語りかけている。
「すみません、席どうぞ!」
ちょっと見ていたのだが、
その女性はイヤホンでもしているのかと思った。
なんとまったく聞こえていないようだ。
「すみません、席どうぞ!」
その子の声はむなしい。
結局、彼は諦めて降りてしまった。
その間もその女性はずっと
スマホを見つめている。
何事かもなかったように。
男の子の親切が泣いていた。
彼も不思議に思ったのかもしれない。
スマホ中毒とは恐ろしいものだ。
あなたもそんなことはないだろうか?
スマホの画面を見ているうちに
何かを我々は失っているのかもしれない。
URAPYON